○○運動の陥穽

amachin2006-05-31


ここメキシコは、タバコにおおらかな国で、なんとメキシコシティにある国際空港のフードコートですらタバコが吸えてしまう。最近増えてきたスターバックスでも大抵は屋外席が設けてあり、そこでタバコが吸えるようになっている。


僕は15歳の時に、当時CobraのヨースコーとポンがやっていたラジオでStraight Edgeのムーブメント(いわゆる「No Drug, No Alchol, No Casual Sex」の3ルールズを掲げるSxEバンドを紹介してた)を知り、ライブで右手に大きくバッテンを書いてステージに上がってからというもの(苦笑)、かなりの嫌煙家だった。ちなみにSwatchのX-ratedモデルも持ってたけど、酒は飲んでたから別にSxEだったわけではない。


それが23歳でメキシコに来たときに、生まれて初めてタバコを吸い、味を覚えてしまった。日本に帰ってからも1日半箱くらいのペースで吸っていたが、近年のタバコ規制の流れでタバコが吸える空間がガシガシ削られていき、タバコの値段もビシビシ上がっていくのに辟易して、一時禁煙していた。が、またメキシコに来て吸い出すようになってしまった。


僕は元嫌煙家だったので、副流煙の鬱陶しさはわかるし、酒の席などで「タバコ吸ってもいい?」って聞かれても、よほど仲良くないか、相当強い意志がないと断りにくいもので、その質問自体にある種肯定を強要する響きがあることもわかるんだけど、タバコはドラッグなので、「嗚呼ダメな俺」とか思ったり思わなかったりしながら今日に至る。ちなみに日本に帰ったら一応やめるつもり。また値上がりするみたいだし。


さて、今日、ひょんなことから日本禁煙学会(一般社団法人/NPO法人)の存在を知った。


そこには「タバコがいかに害悪か」ってことがこれでもかって書かれてるんだけど、気になった記事を以下に引用。

2006/ 5/27 洋服ラック付近が火元か=子供部屋にライター−3児死亡火災で実況見分・大阪 (時事通信記事)

 大阪府和泉市の会社員坂口正登さん(40)方が26日夕に半焼し、長男の小学2年樹喜矢君(7)ら3兄妹が死亡した火事で、府警和泉署は27日、消防と合同で実況見分した。子供部屋の西側壁際に置かれたハンガーラックや、ラックに掛けられた洋服が跡形もないほど焼け落ちており、同署はこの付近が火元とみている。 また、子供部屋の2カ所から100円ライターの焼け残りが見つかった。

 調べによると、ラックには普段、クリーニング済みの服がビニール製の袋に入ったまま掛けられていた。当時、両親は仕事のため不在で、3人が留守番をしていた。 坂口さん宅では約1年前、子供がライターで遊びカーペットが焦げたことがあった。両親はたばこを吸うという。同署は火遊びの可能性も含め、慎重に出火原因の特定を進める。 亡くなった樹喜矢君と二男亜夢瑠ちゃん(4)、長女真衣ちゃん(1)は、ベランダに面した和室で発見された。死因は一酸化炭素中毒だった。母親の朱美さんの携帯電話による指示で、煙が充満していた玄関とは逆側に逃げたものの、煙に巻かれたとみられる。

ご丁寧に、「両親はたばこを吸うという。」が赤の太字になってる。

なんでこういうことするかなー。
この記事の引用に違和感を感じずにはいられないのが、まずわざわざ強調した「両親がたばこを吸う」ということが、事件の本質とまったく関係がないということ。ここで彼らが言いたいのは、
「両親がタバコを吸う」→「家に100円ライターが置いてある」→「子どもが火遊びをして火事なった」ということで、つまり、「タバコを吸うと、こんな惨事が起こりうるかもしれませんよ」と警鐘を鳴らすことだ。


でも、
「家に100円ライターがなければ、火事は起こりえなかった」
と主張することはできても、
「両親がタバコを吸わなければ、家に100円ライターはなかった」
とは言えない訳で、曲がりなりにも「学会」を標榜する団体が恣意的に印象操作をした挙句の論理展開にしてはお粗末過ぎる。問題にすべきは、火元になりうるものの管理であり、火の怖さの教育であろう。(ちなみに他のニュース記事によると、この両親は「ライターは普段から子供の手の届かない場所に置いていた」と話している。)


でもまあタバコ吸う人の方がライター持ってたり、家のそこら辺に置いてたりする確率は高いのは間違いないだろうし、100歩譲ってこの論理に目をつぶるとしても、もっと問題なのは、この記事、つまり他人の不幸を抉る形で自らの主張に利用するこの団体のモラルの低さだ。


喫煙家憎し、の感情はわからないでもないが、「タバコ吸ってるあなた、こんな酷い目にもあいかねませんよ」と言うときに、踏み台にされた3人の子どもを失った両親の悲しみに想像が及ばない自分の醜さに気づくべきだ。


この団体の目的の一つとして掲げられている「禁煙運動を推進する」上で、喫煙家をむげに攻撃したり、蔑んだりするのは、その対象に心的バリアを作らせてしまい、目的遂行の上でとても得策とは思えない。むしろ相手を糾弾することが目的化してしまい、結果、自らの活動の意義を貶めてしまっていないか。これはなにもこの禁煙運動に限ったことじゃない。


てか根本にある思想が、喫煙家根絶なんだな、って今気づいた。。。分煙とかってんじゃなく。


あ、僕は分煙に賛成っす。



PS
まさか引用元の時事通信の記事からこう(赤の太字に)なってんのかなー、と一応チェックしようと思ったら、時事通信のHPでは過去のニュースが無料では閲覧できないようになってるみたい。
で、この記事のタイトルで検索をかけて引っかかったWebニュース(Yahoo!ニュース、@Nifty NEWS、Infoseekニュース、Biglobeニュース)を見てみると、いずれも同じく時事通信の記事でありながら、上記記事の一段落目しか掲載されていない。こういう配信記事の編集の権限ってどうなってんだろ?